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C型慢性肝疾患患者で毎日のコーヒー摂取が肝機能改善に効果(記者発表)

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沙巴体育平台大学院看護学研究科の佐々木 八千代准教授、同医学研究科の大藤 さとこ講師らのグループは、C型慢性肝疾患患者の肝機能改善に対するコーヒー摂取の効果を確認しました。これまで、検診受診者を対象とした調査でコーヒー摂取のALT低下に対する効果が示唆されてきましたが、C型慢性肝疾患患者に限定してもコーヒー摂取のALT安定化に対する効果があることが、本研究で明らかになりました。これは、C型慢性肝疾患患者でALTが高値の患者においても、コーヒー摂取によりALT値が減少する効果を示した初めての研究です。
本研究の成果は 12月 11日午後5時(米国東部時間)発行の米オンライン科学誌PLOS ONEに掲載されます。

発表雑誌  PLOS ONE
URL    http://dx.plos.org/10.1371/journal.pone.0083382
論文名    Effect of Caffeine-containing Beverage Consumption on Serum
Alanine Aminotransferase Levels in Patients with Chronic Hepatitis C Virus Infection: A Hospital-based Cohort Study.
『C型慢性肝疾患患者におけるカフェイン含有飲料摂取と血清ALT値の関
連:コホート研究による検討』
著者名    Yachiyo Sasaki, Satoko Ohfuji, Wakaba Fukushima, Akihiro Tamori,
?Masaru Enomoto, Daiki Habu, Shuji Iwai, Sawako Uchida-Kobayashi, Hideki Fujii, Susumu Shiomi, Norifumi Kawada, Yoshio Hirota

?研究の背景

?わが国では、肝臓がんの主要な原因はC型肝炎ウイルス感染であり、肝臓がんの約80%はC型慢性肝疾患患者から生じています。また、C型肝炎ウイルスの感染者は、わが国全体で約200万人にのぼると推定されています。
臨床現場では、肝機能の指標として血清中のアラニン?アミノトランスフェラーゼ(ALT)値を用いていますが、ALT値が高い患者では肝臓がんを発症するリスクが高いと言われています。そのため、C型肝炎ウイルス感染者では、肝臓がんの発症を予防するためにも、ALT値をコントロールすることが重要です。
これまで、検診受診者を対象とした調査で、コーヒー摂取のALT値低下に対する効果が示唆されてきましたが、C型慢性肝疾患患者においても同様の効果があるかどうかはわかっていませんでした。

研究の内容

本研究では、C型慢性肝疾患患者を対象に、調査開始時のコーヒー摂取状況が、その後1年間のALT値にどのような影響を及ぼすかを検討しました。
調査開始時にALT値が正常値(≤45 IU/L) ※であった者のうち、「1日1杯以上、ドリップコーヒーを摂取」していた者では、全く摂取していなかった者と比べて、「1年後のALT値も正常を維持」している者が多く(89% vs. 76%)、他要因で調整後のオッズ比は2.74でした。一方、調査開始時のALT値が高値を示した者でも、「1日1杯以上、ドリップコーヒーを摂取」している者では、「1年後のALT値が20IU/L以上減少」している者が多くなっていました(37% vs. 22%, 調整オッズ比=3.79)。  
しかし、デカフェコーヒーを摂取していた者は、摂取していなかった者と比べると、「1年後のALT値も正常を維持」している者が少なく (60% vs. 82%, 調整オッズ比=0.26)、また調査開始時のALT値が高値の者で「1年後のALT値が20IU/L以上減少」した者はいませんでした。
以上より、C型慢性肝疾患患者において、1日1杯以上のドリップコーヒー摂取は、その後1年間のALT値の安定化に有益な効果があることが示唆されました。
(※ALTの正常値は、研究実施当時の基準値を用いています。)

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期待される効果

  1. 現在、C型慢性肝疾患の主な治療として、C型肝炎ウイルスの排除を目的としたインターフェロン治療が行われていますが、副作用などの問題によりインターフェロン治 療が行えない者もあります。そのような患者さんに対して、ALT値の安定化に有用な生活習慣の方法として、推奨することができます。
  2. その結果、肝硬変への移行を減らす、あるいは肝臓がんの発生を予防する効果も期待でき、患者さんのQOL(生活の質)を改善し、医療費の削減にも効果があると考えられます。

今後の展開について

  • ALT値の安定化に対するコーヒー摂取の効果について、より長期的な調査を行う。
  • インターフェロン治療中の患者さんにおいて、ウイルス排除効果に対するコーヒー摂取の影響を検討します。
  • コーヒー摂取の長期効果(肝硬変への移行を予防する、肝臓がんの発生を予防する)を検討します。

用語解説

  1. C型慢性肝疾患:C型肝炎ウイルスの持続感染による慢性肝疾患です。
  2. アラニン?アミノトランスフェラーゼ(ALT):細胞内でつくられる酵素で、主に肝細胞に存在しています。肝細胞が破壊されるとALTが上昇します。
  3. ドリップコーヒー:コーヒーフィルターを通して作ったコーヒーのことです。
  4. アンフィルタードコーヒー:コーヒーフィルターを通していないカフェインの入っているコーヒーのことです。
  5. デカフェコーヒー:カフェインの入っていないコーヒーのことです。
  6. オッズ比:ある要因への曝露がある場合の結果指標のオッズが、曝露がない場合の結果指標のオッズに比べて、何倍高いかを示しています(なお、オッズとは、ある結果指標が起きる確率と起きない確率の比のことです)。この研究でのオッズ比は、コーヒーを飲む者は飲まない者に比べて、1年後の「正常ALTの維持」や「ALT20IU/L以上減少」が何倍起きやすいかを示しています。

  ※この研究発表は下記のメディアで紹介されました
   日本経済新聞、産経新聞、J-WAVE TOKYO MORNING RADIO

研究内容に関するお問合せ先

沙巴体育平台大学院看護学研究科 准教授 佐々木八千代
E-mail :y-sasaki@nurs.osaka-cu.ac.jp
TEL :06-6645-3537

沙巴体育平台大学院医学研究科 講師 大藤さとこ
E-mail :satop@med.osaka-cu.ac.jp
TEL :06-6645-3756